この年11月に、岡山県芸術祭中心公演として上演された
ナイトオブウォーリアーズという合同公演の、作・演出に白神、
出演に珠酉、伽羅子、お京天地等が参加し、
また、翌95年の銀仮面団春公演「広島に原爆を落とす日」に珠酉が、
秋公演「サイレント・ナイト」に吉童が客演したため、
昇天堂一座にとって95年は新人育成と、充電期間となった。
現在の座員のほとんどはこの時期に一座に入っている。
踊り、三味線、着付け、観劇、発声、柔軟、エチュードと、
基礎練習を中心に実力養成に重点を置いた。この努力の結果を試す日がやってきた。
96年4月城下交差点地下広場でのしろちかコンサート(しろちか利用促進協議会主催)
阪神大震災チャリティー「歌舞の宴」である。
道行く人を観客とし、一人その視線の中で歌い踊ることで、度胸と自信を得ることが出来た。
昼すぎから3時間半にわたる催しは、熱心な観客の方々や、
ゲストの方々に支えられて成功に終わり9万円余の浄財を寄贈する事が出来た。
そして2週間後の5月11日、今度は特別公演「厨子王」の幕が上がった。
この作品は、近藤ようこ氏の漫画作品を原作にして3時間2幕にまとめたもので、
獅子、大蛇、怨霊等の作り物や、血の海のセット、飛天、白拍子等の豪華な衣装、
そして、多彩な踊りや歌を散りばめた、中世の復讐たんである。
一面、悲しく酷くグロテスクでさえある話を、美しく面白く、笑いを交えて描き出すという作風は、
秘宝館昇天堂一座の得意技であるのかも知れない。
好評の内に約一年を掛けた、この特別公演を終えて、
一座は、休む間もなく1996定期公演へと走り出すのであった。
秘宝館昇天堂一座の96年度定期公演は、
11月23日24日表町3丁目の千日前貸しホールで開催されました。
第一部(前狂言)として上演されたのは「風雲剣士暁にきる!!」
米浦藩公金横領疑惑に絡むお家騒動を謎の怪剣士、
実はヒヨコの佐々木比与之進が一刀両断にするという痛快娯楽時代劇でした。
(原案・林清文/珠酉娘娘、演出・珠酉娘娘)
第二部(切狂言)は「清滝の双子の姉妹」清滝の木の下に捨てられていたという
1997年度の定期公演は、6月28日・29日、千日前貸しホールで開催されました。
お芝居は2本、どちらも短編劇集のビデオからで、
一本は琴蕗百合音・作「昔話羽衣表紙〜むかしがたりはごろもびょうし〜」
天の羽衣をめぐる宮大工の宗助と、天人輝夜(カグヤ)の愛の物語を
作・琴蕗百合音、演出・葛波羅踏馬が手がけました。
輝夜役・一座初のトリプル・キャストも話題になりました。
もう一本は、座長・珠酉娘娘の作・演出で「JIJI&BABA」。
能や人形浄瑠璃の様に、セリフを喋る役者と、動きを演じる役者を別にして、
二人一役システムで演じ、「おむすびころりん」「笠地蔵」「鶴の恩返し」等の
昔話を散りばめたお爺さんとお婆さんの愛の物語でした。
この愛の作品2本に、昇天堂名物の歌や踊りのグランドショーが加わって、
「天晴れ公演」は副題の「愛してるぜ!」気分満載で好評を博しました。
そして特別公演「朱砂之雄」というビッグ・プロジェクトが始まったのです。